千葉妖怪伝説「その八 猫餅と蟹娘」
ご注意:
下記の記事は、地域情報サイト「まいぷれ」で掲載されていた「千葉妖怪伝説」というコンテンツを転載したものです。記載されている内容は、当時のものですので、現在の情報とは異なる可能性があります。ご了承ください。
最近はよくライブなどをやっております。
「妖怪王がライブ?」と不思議に想う人もいるかもしれませんが、実はもう2度程、怪談のライブをやっているのです。お話する内容はありきたりな心霊話をするのではなく、一般の人がなるべく聞いた事のないような奇談を中心に選ぶ事が多いのです。特にフィールドワークの途中で聞き込んだ話や、地元のマイナー資料にある珍しい話に出会えた時程感動する事はありません。このような奇談の中で今回は2つ程お話したいと思います。読んだあとで怪異が起こってもなんの保障もできませんので各自気合いを入れて読んでくださいね(笑)
まずは、江戸川区の旧家で聞いた話です。ちょうど幕末から明治にかけての頃だと言われています。ある豪農がいたそうです。大層な羽振りで多くの使用人を使い、飛ぶ鳥さえも落とす勢いだったそうです。当然正月などは一族郎党集まっての大賑わいになってしまいまして、餅つきなんかも皆で楽しく盛り上がっていたそうです。ある年の正月の事でした。さあ餅をつこうという事になりまして、女たちが準備して、男性陣が「ぺったんぺったん」と餅をつき始めたそうです。
その家には可愛がっていた猫がおりまして、ちょうど旧家によくある黒くて大きな梁を「すたすた」と歩いて渡っているところでした。下であまりにも「ぺったんぺったん」と大騒ぎしているもんですから、猫も下が気になったんでしょうね。いつもなら渡りきる梁から、その日に限って足をすべらせ下に落下してしまったのです。下ではちょうど餅をついてましたから、臼の中の餅に猫が落下してしまったわけです。ここまでならいいのですが、餅つきっていうのは「ぺったんぺったん」始まったら途中ではなかなか止められないもんです。餅の中に落下した猫にめがけて杵が振り落とされ、猫が餅と一緒にぐちゃぐちゃになってしまったのです。
あまりの悲惨な状況に一同息を飲みましたが、こうなっては、仕方ない。餅だらけになった猫のつぶれた死体をそのまま葬ってやったそうです。その年はそれで餅つきはやめてしまった。しかし翌年また餅をつく事になった。
去年あのような不幸な事があったんで今年は心機一転頑張ろうと一同餅をつきだしたのですが、何故か何度ついても餅の中から「猫の毛」が出てくるのです。それから毎年その家が餅をつく度に「猫の毛」が出るので、子孫には餅をつく事を禁じたといいます。
「猫の毛」がまじった「猫餅」、あなたは食べたいですか?
浦安ではこんな奇談が伝わっています。江戸末期から明治にかけて浦安は蟹漁が盛んであり、多くの漁師がモクゾウガニ漁で生計を立てていました。当時のモクゾウガニの漁の方法は深夜に蟹のいそうなポイントに網をしかけておきます。そして船で一番仮眠をとり朝一番で引き上げるというものでした。
ある男がいました。彼はなかなかの蟹漁の名手であり、いつも多くの蟹を水揚げしていました。彼自身が蟹がよくとれるポイントを熟知していた事もあったようです。
ある夜の事、いつものように蟹がよくとれるポイントに出かけた男は網を仕掛け、蟹が入る朝まで仮眠をして待つ事にしました。すると男の夢の中にとても美しい娘さんが出てきたのです。花柄の着物が見事で、かわいい娘さんの手招きで男は夢の中でふらふらと娘さんの方に近寄ろうとしたのです。すると何やら感じる冷たい感覚。男がふと目を覚ますと、船から半身が出て水に浸かっています。
「うひゃ、これはいけない」
男は正気を取り戻しました。あやうく海の魔物に命をとられるところだったのです。そして男は、そろそろ網の引き上げ時だと判断し、網を引き上げました。今日も大漁のようです。多くの蟹がかかっています。しかし男にははっきり見えました。蟹の中からあの娘の着物の柄が見えたのです。
そうです。蟹の塊と見えたものは びっしりと数百匹の蟹がしがみついた娘の溺死死体だったのです。
あなたも釣りなどで夜の船に乗る時は「蟹娘」の誘惑に注意しておいてくださいね。
まいぷれ編集部
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