千葉妖怪伝説「その九 平将門公・魔界より復活(1)」

 千葉県をからめ魔界について書き進めて行く上で、触れねばならないのが「平将門公」ではないだろうか。

 かつて新皇と称し、関東を独立国にしようとした。東国のヒーロー、それが平将門である。事実、一時は本当に関東は日本から独立していたという説を唱える作家もいる。

 確かに当時の将門は関東地方の国司を朝廷とは別ルートで任命し、自らを中心とした国家体制を整備しつつあった。そんな反骨精神旺盛な将門に対して今も関東では判官贔屓する傾向がある。当時「東人(あずまびと)」と都の住民に呼ばれて田舎者扱いされた関東人の反発心を体現してくれたのが将門であったのかもしれない。

 そんな将門も、俵藤太によって討たれてしまう。将門の最後は悲惨で藤太の放った矢がコメカミに当たり、落命してしまうのだ。つまり、コメカミが将門の弱点であり、影武者との見分け方であった。なおコメカミとは古来より日本では大切な部分とされてきた。何故なら、米を噛む時に動く部分であるから「コメカミ」という言霊を当てられたという。さらに神道的解釈をすると神がそこにいるとされたのだ。つまり将門の弱点にはあまりにも相応しい部分である。

 一方、将門という魔王を打ち破った俵藤太も尋常な男ではない。彼も限りなく魔物に近い男なのだ。かつて俵藤太は橋の上で眠っている大蛇を平然とまたいだ剛勇を見込まれ、助っ人を頼まれる。竜宮の使いである大蛇を助け、「妖怪・大百足」を弓矢で射殺しているのだ。その時、魔物にとって人間のつばが毒物であると見抜き、矢につばをつけて撃退する事に成功している。

 また他のエピソードでは路頭に迷った鮫人(さめびと)を助け、自分の家に住まわしてあげるという親切ぶりも発揮している。しかし、鮫人の涙が宝石になり、高く売れるとなるとちゃっかり販売する商人ぶりも見せているのが微笑ましい。

 このようなエピソードから判断するに俵藤太とは、大蛇や鮫人を助けるなど竜宮系の魔物と縁が有り、損得抜きで動く親切な男である。それでいて商売もうまかったり、百足や将門の弱点を巧妙に見抜くなど、合理的な考えもある点があげられる。このように魔物でありながら、男気と合理主義を併せ持つ不思議な「怪人・俵藤太」にかかれば、ひどく純粋な「魔王・将門」が討ち取られたのもいたしかたないかもしれない。

 では何故将門は、本物と偽物の見分け方でもあり、弱点でもあった「コメカミ」の秘密を藤太に知られてしまったのであろうか。それには次のような話が残っている。俵藤太は将門の影武者に悩まされていた。いくら討ち取っても偽物なのだ。本物は一体誰なのだ。藤太のあせりはピークに達した。

 その時、ひとつの妙案が浮かんだ。自分の妹である「桔梗の前」を将門に間者として送り込む事であった。こうして「桔梗の前」は将門に取り入り、側室となった。そして注意深く観察し、「コメカミが動くのが本物である」と見破ったのである。それを聞いた藤太は狂喜乱舞した。そして見事、将門を打ち破ったのである。
しかし「桔梗の前」はくやんでいた。例え兄の為と言えども、自分の夫を売ったのである。そしていつしか彼女は将門を愛していたのだ。悲観した桔梗の前は、現在の船橋市天沼公園付近に御堂を構え将門の菩提を供養した。

そして最後は船橋の浦(現在の船橋港)に身投げしてしまったという。

minato

              続く


ご注意:
この記事は、地域情報サイト「まいぷれ」で掲載されていた「千葉妖怪伝説」というコンテンツを転載したものです。記載されている内容は、当時のものですので、現在の情報とは異なる可能性があります。ご了承ください。

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