千葉妖怪伝説「その二十二 綺人が街にやってくる」
世の中には「綺人」が多い。街角、ネットあらゆるところに綺人は出没する。とにかく、彼らはポップなファンションを身に纏い、こだわりを持った人生を満喫している。つまり、自由人なのだ。
だが、間違っても「奇人」とは違う。奇人は他人に迷惑をかける我が侭な人間のことをさすのだ。それに比べ、「綺人」とはあくまで自己の主張、行動にポリシーがある。また通常自分が攻撃されない限り、他人に被害を与えることはない。「綺人」はつまり、紳士でもある。だから、私は羨望と敬意を持って、「綺人」と呼んでいるのだ。
例えば、古い言葉でいうと”カブキ者”とでも言っておこうか。世の権力に諂う事もなく、おもしろく、小粋に人生を生き抜いた”カブキ者”。まさしくこの現代のカブキ者こそが「綺人」なのだ。
この個性豊かな彼らが都市伝説の怪人・妖怪のモデルになっている可能性は高い。何故なら、最も身近で不思議なオーラを放つ存在が「綺人」であるからだ。この21世紀、街角で目をこらせば、沢山の「綺人」が見えてくる。彼らのカブキぶりは一般人にとっては、不思議で妖怪チックな行動に写るのかもしれない。
例えば、千葉県内の都市伝説で言うと「坊主男」だ。
「坊主頭の男で奇怪な行動をする奴がいる。奴は妖怪っぽい。」
こんな話を聞いたのはもう20年近く前の事。津田沼の代々木セミナールの同級生からだった。
「坊主頭の怪人は、頭をこすりつけてくるんだ。奴は多分、何かの精だ」
友人はこんな噂をつぶやいた。
この話から10数年、同じ話を船橋に住む肉球マニア(以後、ちびっこQに改名)というハンドルネームを持つ女性から聞いた。やはり、ここでも坊主頭の男は怪しい行動をして おり、彼女は坊主頭の男を”怪人”と呼んだ。
更にその後、この2つの証言の他、違ったルートから2件の都市伝説を聞いた。やはり、坊主男は総武線周辺にいるのである。
一方私は、ふと怪人「タマ」のことを思い出した。まだうちのかみさんと結婚する前のこと。総武線や船橋周辺に出る坊主頭でランニングシャツの男について話していた。イカ天という番組でブレイクしたバンド・たまのドラムに似ていることから、私とかみさんが「タマ」と呼んでいたのだ。
この都市伝説怪人はひょっとしたら 坊主頭の男、つまり坊主男と同一人物かもしれない。だとしたらかなりの耳目を集めた「綺人」であったわけだ。しかも、都市伝説化しているのだ。見事なカブキっぷりである。それでこそ現代妖怪、都市伝説のモデルになるぐらいの「綺人」であるのだ。いや生きるアートかもしれない。
なお他にも素敵な騎人は千葉にいる。なんといっても「でかちゃり」は筆頭だろう。2mぐらいの自転車で猛スピードで小学生を追いかけてくる怪人だ。
70年代末期~80年代前半の小学生はずいぶんと怖がったらしいが、実はこの「でかちゃり」は、うちの弟の先輩がモデルである。古風な番長だったその先輩は、子供になめられていかんと、バイクのエンジンを自転車に積載し、猛スピードで市川・船橋を爆走したのだという。今で言う電動機付き自転車である。なんとも豪快ではないか(本人も苦笑しているらしいが(笑))魁!男塾を地で行く先輩に乾杯だ!
まあ昨今のつまらぬ男より、噂や都市伝説になるような、すごい奴ほどおもしろいのだ。そんな豪快な奴らの楽しいエピソードが、妖怪談として熟成していく可能性は大きいと思える。
ご注意:
上記の記事は、地域情報サイト「まいぷれ」で掲載されていた「千葉妖怪伝説」というコンテンツを転載したものです。記載されている内容は、当時のものですので、現在の情報とは異なる可能性があります。ご了承ください。
まいぷれ編集部
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