千葉妖怪伝説「その二十五 首無し霊団の祟り(後編)」

「おかしいな、車が動かない… 何故だ」

car

不審に思った社長は車を降りて、確認する事にした。
そして、前屈みになり、車のタイヤを見ると、悲鳴をあげてしまった。

「うわっ、なんだこれ」

地中から… 無数の白い手が、はえている。
その手は、車のタイヤを{ぎゅっ}と掴んでいる。
やけに白いその手には爪さえ確認できた。

「ひい~っ」

息も絶え絶えに、這うように家の中に逃げ込んだ。

「おーい、誰か来てくれ」

社長は必死に家族を呼んだが反応は無い。皆どこへ行ってしまったのか。

「誰か、誰かいないのか」

リビングに駆け込んだ社長は、家族の置き手紙をみつけた。妻の実家に、皆帰ってしまったのだ。こんな恐ろしい家に俺一人なのか。やっぱり、みんなが言っていた事は事実だっったんだ。社長は怖くて気を失いそうになった。

「んっ?」

ふと、周囲に視線を感じた。

(…誰かいる)

一人二人じゃない大勢いる。社長は手紙からゆっくり目を離すとリビングを見渡した。

「ひっ」

社長は声にならない声をあげた。
部屋のあちこちに白い人の形をしたものが立っている。
20体はいるだろうか。
大勢の霊体がひしめき合うように{ぼうーっ}と立っているのだ。
しかも、全員首がない。

(…こいつら、全員、首が切断されている)

首から

{どくどく}

ドス黒い血を流しながら…

両手を前にぶらぶら突き出しながら…
社長に近づいてくる。何かを訴えるように

「なっなんだ、おまえらは、くっ来るな」

首の無い幽霊立ちはじわじわと社長に忍びよってくる。

「ひゃあ~、やめてくれい」

社長は首無しの霊たちの集団に囲まれ、失神した。

翌朝、出勤しない社長を心配した社員によって発見された。その後、社長はしばらく過労という事で入院した。なお後日、わかった事だが社長の先祖が首切り役人らしく、その先祖が切った罪人たちが葬られていたのが、社長が買った隣接地の墓場であったらしい。因果は巡るのだ。


ご注意:
上記の記事は、地域情報サイト「まいぷれ」で掲載されていた「千葉妖怪伝説」というコンテンツを転載したものです。記載されている内容は、当時のものですので、現在の情報とは異なる可能性があります。ご了承ください。

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