千葉妖怪伝説「その二十八 謎の一本足妖怪を追え」

前回に引き続き船橋に出現した謎の一本足妖怪を追跡してみよう。最初の出現場所である和歌山の場合、「ひとつただら」や「がしゃんぼ」など伝説上にも一本足妖怪の逸話が確認できる。逆に言えば、古来よりこのような(一直線の足跡がつく騒動)があったからこそ、妖怪伝説が形成されたのかもしれない。

 では千葉県の場合、一本足を連想できる妖怪や伝説はあるのであろうか。 まず最初に思い浮かぶのは、往年の名著「いちばんくわしい日本妖怪図鑑」(勿論、記述は今は故、妖怪作家の佐藤有文先生である)に出てくる。「一本松の女」である。日本の妖怪地図という各地を代表する妖怪が一覧できるコーナーに、千葉代表の妖怪として掲載されている。しかも、この妖怪のビジュアルは、日本髪を結った美女が裸体で立つ姿により表現されている。(ある意味、こんな裸体の美女妖怪を子供の頃、目撃したら、性的にゆがみが生じるかもしれない)

 またこの妖怪、人間に対して行う行為が、とんでもなく卑劣だ。松のそばに立つ人を招き、ひきづっていって足を一本だけ食べるのだ。どうやら、自分と同じような境遇に人間を陥れるのが目的のようだ。なんと利己的な妖怪であろう。それにしても、いったいこの妖怪はなんだ!子供心にも筆者に衝撃を与えた妖怪の一つである。

 定説では、この「一本松の女」の場合も妖怪「びろーん」などと同じく佐藤有文先生が怪獣に夢中だった子供達を、妖怪好きにするため、創作された子供本専用の妖怪だと言われている。確かに、筆者がこれだけ県内の図書館で調査しても、古老たちに何十人インタビューしても出てこないのは、創作である可能性が高いと言える。

 だが、いずれの創作妖怪も元ネタがあって初めて成立している。この「一本松の女」にも何かモデルがあるのかもしれない。ちなみに筆者がこの「一本松の女」の元ネタ(というか情報ソース)になったものは三件あるのではないかと思っている。

 まずはこの連載でも取り上げた事のある。「七廻り塚の怪女」である。千葉市に「七廻り塚」という不思議な名前の円墳(なお「七廻り塚」とは俗称で、本来は「姫塚」と呼ばれている)があるのだが、この「七廻り塚」を片足飛びで七回廻ると、片手片足の血まみれの怪女が出てくると言う。なかなか強烈な話である。なおこの逸話は近年派生したもののようで、古い話ではない。むしろ、現代の心霊スポット周りに付随した妖怪談ともいえよう。

 それにしても、七回廻ると出てくると言うのが気になる。将門とその末裔である千葉氏が繁栄した千葉県では今も「妙見信仰」が根強い。その妙見信仰は北斗七星を奉る観点から数字の(7)を神聖視するむきがある。ひょっとしたら、「七廻り塚の怪女」も「妙見信仰」に関連あるのかもしれない。つまり、七回廻ることで北斗七星の霊力が発動し、「七廻り塚=姫塚」の中に眠る姫が甦る…というわけだ。

 この「七廻り塚」に「バラバラ松の怨霊」という伝説が加味され、現代の子供本妖怪「一本松の女」というナイスキャラクターが出来上がった可能性はあると思う。ちなみに、「バラバラ松の怨霊」だが、これは「七廻り塚の怪女」より残虐な化け物である。

 次回も千葉県の「一本足妖怪」について追求していきたいと思う。


ご注意:
上記の記事は、地域情報サイト「まいぷれ」で掲載されていた「千葉妖怪伝説」というコンテンツを転載したものです。記載されている内容は、当時のものですので、現在の情報とは異なる可能性があります。ご了承ください。

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