千葉妖怪伝説「 その三十三 最新版・千葉県の怪談・奇談」
この夏も筆者は多くの怪談本、妖怪本、幽霊本をかかえ大騒ぎである。そして、同時に思うのが、怪談・奇談というものは人の数だけ無数にあるという事である。つまり、人の人生と同じだけ奇妙な物語も存在するわけであり、人の生涯そのものが怪談という図式も成り立つ。この一年で聞いた最新版の千葉の怪談をお届けしたい。
これは船橋のお住まいのあるご老人から聞いた話である。船橋市内某所にある家では何故か、女が早死にするという。原因はよくわからない。事故であったり、或いは病気であったり理由は様々である。兎に角、女性が死ぬのだ。この奇妙な因縁に、その老人はこのような因縁話を付け加えた。昭和初期の事、気のよい真面目な青年がいた。その青年は一生懸命、農業に精を出したのだけどいつまでたっても貧乏から抜け出せなかった。そんな青年にも、好きな女性がいた。青年はいつか女性を嫁に迎える為に懸命に働いた。純情な青年の態度は次第に村人の知るところとなり、青年と女性の仲は地域公認のようなものになっていった。
ある時、村はずれにある立ち飲み屋で青年がお酒を仲間と楽しく呑んでいた。そこに現れたのが村の嫌われ者のじいさまであった。じいさまは既に酒に酔っており、青年と仲間たちにからみはじめた。おとなしい青年は最初は我慢していたものの、あまりにしつこくじいさまがからむので、ついに怒りを爆発させ、いきなり飲み屋を飛び出した。一同が驚いていると若者は、農機具を手に戻ってくるとじいさまを追いかけた。じいさまは逃げ回ったものの、ついに若者に農機具でつき殺されてしまった。そのじいさまが絶命した場所が、女性の早死する家の前だという。つまり、女性がらみのトラブルで殺されたじいさまの怨念が女性に祟っているらしい。無関係にお宅に祟るのがどうにも解せないが、理不尽な怨霊、言いがかりの怨念も中にはあるかもしれない。
次の話は市川市に住む弟の口から聞いた話である。弟は現在、ある会社の役員をしているのだが、その事務所に来る某銀行の営業マンの話だという。その営業マンは、元々高校球児で、野球の名門高校の出身であった。(この高校名は千葉県民なら誰でもしっているはずなのであえてイニシャルも入れない)勿論、その人も現役時代は厳しい練習に明け暮れた野球少年であり、同僚にはプロ野球選手になったものもいた。
夏場などは学校に泊まり込みで野球の練習をするのだが、宿泊するのは古くさい宿舎であった。それもそのはずである。その宿舎は太平洋戦争当時の年代物で、兵隊たちが宿舎として使用したものらしい。
ある夜の事、夜間練習を終え、ふらふらになって宿舎に帰り、部員たちがくつろいでいると、奇妙な音が聞こえてきた。
「おい、みんな足音が聞こえないか」
仲間の発言に何名かが頷き、全員で耳をすました。
「ザック ザック ザック ザック」
集団で規則正しい行進である。まるで軍隊の足音、軍靴の響きである。外はさっきまで自分たちが練習していたグランドである。いったい、今だれがあそこで行進しているんだ。あまりの恐怖に誰もグランドに見に行く事はできなかった。
そういう奇妙な事が何度も続き、営業マンと仲間は思いきって先生たちに相談してみた。すると先生の答えは意外なものであった。
「ここは昔、軍隊の駐留地だったからね。いろいろ出るんだよ。先生の中にも”兵隊の幽霊”に出くわした人もいるんだ」
営業マンの現役時代は軍靴が鳴り止む事はなかった。最近、母校を訪れたところその古い宿舎はなかった。時代の波に戦争の残像は消えたのであろうか。
ご注意:
上記の記事は、地域情報サイト「まいぷれ」で掲載されていた「千葉妖怪伝説」というコンテンツを転載したものです。記載されている内容は、当時のものですので、現在の情報とは異なる可能性があります。ご了承ください。
まいぷれ編集部
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