千葉妖怪伝説「その三十七 滅び行く妖怪伝説」

取りあえず今回で、最終回を迎える千葉妖怪伝説。まる4年近く続いた連載もいよいよお別れである。思えば、千葉に伝わる妖怪・怨霊などを幅広く紹介してきた4年間であり、その間、随分と「まいぷれ」の読者、スタッフの皆さんから応援して頂いた。本当にありがとうと、この場を借りて言わせて頂きたい。

来月からは「新企画」で再びあえるのだが、更なるご声援を心待ちにしている。「まいぷれ」をホームタウンにする作家・山口敏太郎をこれからもよろしく。

 さて、最終回という事で、妖怪界の人気者・河童について紹介してみよう。千葉の河童たちについては様々な伝承があるのだが、船橋・海老川の河童、印旛沼に棲む一本足の河童、館山鎌田ケ淵で人を引き込んだ武士の霊魂が化けた河童などが有名である。

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河童を使った町おこしも盛んで、銚子市の河童村は、昭和60年(1985)に開村し、時折「かっぱ祭」を開催し人気を博している。また画期的な事は、平成9年(1998)から民俗行事の「川びたり」を復活させた事である。毎年12月に開催されているこの「川びたり」は、最近では地元の祭としてすっかり定着した。旧渡し船・乗り場から新生町まで晴れやかな提灯行列が練り歩き、銚子倉庫下のポケットパーク(「母子河童像」がある事で有名)で神事を行う。カッパの好物であるキュウリや川びたり餅を捧げて、利根川の水質浄化と、水害事故が起こらないように祈るのである。

また銚子市では、元市長が自分のカッパコレクション4000点を公開した「大内カッパハウス」も人気スポットである。ここも東西のカッパグッズに埋め尽くされ、多くの観光客が押し寄せている。つまり、銚子ではカッパが、地元の観光や祭の復興に一役かっているのだ。ある意味において、カッパの棲息できる水環境を創ろうとする考えは、環境保護にもつながる。カッパは水の妖怪であると同時に、生々流転を永遠に繰り返す水そのものであるのだ。事実、松谷みよ子女史の著作には、現代民話としてカッパが河川の汚染を訴える話が掲載されている。もはや今の日本は、人間どころか、妖怪さえ住めない国なのだ。妖怪伝説を守る事は、日本という国を守る事につながる。

 具体的な場所の記述はさけるが、滋賀県の某寺に「雷獣」のミイラがあり、参拝者たちも妖怪として拝観していた。無論、伝説の妖怪「雷獣」が肉体を持っており、人間に捕獲され、ミイラ化しているとは思えないので、何か他の動物であろう。だが、そのミイラが「雷獣」と呼ばれ、畏怖される背景に「妖怪伝説の真実」を見るのであって、それはそれで貴重なミイラであるのだが、数年前このミイラに虫がわいたからという理由で寺は焼却処分にしてしまったという。

 この悲劇を聞いた時、思わず唖然としてしまったが、なんと利根川近郊の旧家で保存されていたカッパのミイラも廃棄されている事が昨年夏にわかった。筆者が雑誌の企画で取材を申し込むと、祠は解体され、ミイラは捨てたというのだ。妖怪に込められた日本の民俗文化はもはや風前の灯火である。これは、今生きている我々が守らねばならない、伝承行為の一環である。日本文化=妖怪を滅ぼしてはならない。妖怪は我々の先祖が残した文化のタイムカプセルなのだ。


ご注意:
上記の記事は、地域情報サイト「まいぷれ」で掲載されていた「千葉妖怪伝説」というコンテンツを転載したものです。記載されている内容は、当時のものですので、現在の情報とは異なる可能性があります。ご了承ください。

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